まあだいたいこんなかんじ。

誰かの役に立つといいなと思いつつ、やくたいもないことを書きます。

ムーランルージュ!ザ・ミュージカルはいいぞ〜!

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【転載禁止】まとめサイト等への転載、動画への直リンクはご遠慮ください。動画はプレショー撮影が許可されていた2019年7月27日に撮影したものです。現在は撮影は禁止されています。

ムーランルージュ!ザ・ミュージカル、ボストンでのワールドプレミア上演時には、熱心な映画ファンからは「映画と違う」と不満が上がった一方で、批評家は絶賛していた。

ブロードウェイでの公演も半年が過ぎ、多くの人がこの"over the top(超派手な)"と形容される舞台に詰めかけた。ニコール・キッドマンがバックステージを訪問してアーロンたちをハグするほど喜んでくれたのは記憶に新しい。(超うれしい)

映画の方が、ボリウッドシーンにケレン味があるしユニークなキャラクターも多い。しかし物語自体は古典的な男女のメロドラマなので、面白いし美しいキッドマンも大好きだけど、今見るとツッコミどころも多い話だった。(お好きな方ごめんなさい!)

そのまま舞台化されても、時代に合わずに批判されるかすぐに飽きられてしまうだろう。そこをバズ・ラーマン監督いわく「映画に敬意を払った素晴らしいアダプテーション」によって価値観のアップデートを図り、新しい愛の物語として深まったと思う。

 

幕があがる前から、舞台の上ではMoulin Rougeの赤いネオンのもと、紳士と踊り子たちの秘密の恋の駆け引きが繰り広げられ、美女が鋭い剣を飲んで見せる。そこへ現れたクリスチャンは、ゆっくりと歩きながらクラブを見渡し、剣の美女と視線を交わし、観客で一杯の客席を見上げる。誰かを探すような表情だといつも思う。


MR! Pre-show Cristian 07/27/2019  
(幕が上がる前のプレショーの撮影が許可されていた2019年7月に録画。現在はこのプレショーの撮影は禁止されています)

 

彼は少し寂しげに微笑んで、目を閉じ、指揮者が演奏を始める時のように優雅に腕を広げる。重低音の前奏とスナップが響き渡り、彼の手の動きに合わせてMoulin Rougeの巨大なネオンが上がっていく。

 

MR!ミュージカルは、愛し愛される男女の愛だけでなく、報われなくても見守り続ける愛や、寄る辺ない者同士が集まった家族としての愛、どんな身分でも尊厳は守られるべきという人間愛、そして自分が選択する自分の人生への愛に満ちている。

その一方で、自分自身への信頼の揺らぎや、心の奥底にある執着が露わになる時の反応や、頭では納得していたはずなのに感情に裏切られる絶望、といった人の心の暗部も鮮やかに描かれる。
舞台は19世紀末でも、耳慣れた歌の歌詞が、現代の私たちも確かに同じ思いを持ったことがある、ということを想い起こさせる。これぞ既存の曲を使ったジュークボックスミュージカルの醍醐味だと思う。

もし私のように英語に壁を感じる人がこの舞台を観に行くなら、ぜひ、戯曲を読むようにサントラで使われている歌の歌詞を読んでいくのをお勧めする。アーロンもあちこちのインタビューで語っているが、まさに「歌詞が物語を牽引していく」のだから。ただの「曲」として聞き流してしまうのはもったいない。

 

きらびやかな暗黒の時代、クリスチャンとサティーンが望んだささやかなハッピーエンディングは叶わなかったけれど、クリスチャンが深い喪失を超えて最後に見せる表情は、私たちを再び物語の始まりに連れて行く。

そうして何度も何度も観てしまうのだ...。

 

以下、アーロン私設ファンサイトに書いた記事も貼っておきます。

オタク丸出しの、ボストン版MR!ミュージカル観劇メモ&感想(プレビュー初日)

https://aarontveit.themedia.jp/posts/4531806

 

ちょっと冷静に書こうとした、BW版のMR!ミュージカルレビューとあらすじ(オープニングナイト前後)※ラストネタバレあり

https://aarontveit.themedia.jp/posts/7265385